札幌ステラプレイス発 WEBマガジン

ステラ部

6.22
Sun
JUN 2025
週刊ステラ部 vol.27

透明になれる場所探し

2025.06.09 Mon
藤森 恵里奈
バダンバルー[ EAST 3F ]

 私は休みの日になると、時々、透明になれる場所に足をのばすことがあります。
 正確にいうと、「透明な感覚になれる」場所です。たとえば、緑が生い茂る公園や、山や川。光の差し込むアトリウム、歴史を感じる建物、心にそっと寄り添ってくれるような雰囲気のカフェ。
 自然と心がおちついて、深呼吸がしたくなったり。光やにおいや色彩、周りの音など、その空間を全身で感じ取れる──そんな場所です。
 そこにいると、「クリアな自分に立ち返れる感覚」になります。それは、自分の中の余計なものが削ぎ落とされて、思考や感じ方が、スーッと透き通っていくような。日々流れてくる様々な情報、動画、ニュース。他人の感情、思想。それらを濾過して、フラットな本来の自分の軸に戻れる──そんな感覚です。
 日常的に、他人の価値観やあふれかえる情報の渦に包まれると、自分の軸が揺らいでしまうことがあります。だから私は、透明な自分を意識的に取り戻すようにしています。

 きっかけは3年前、ふと思い立ち旅に出かけた佐渡ヶ島でした。
 エメラルドグリーンの海、瓦屋根の街並み、夕暮れに照らされた田んぼ。緑が広がる丘の上から望む青々とした山並み。容赦なく降り注ぐ夏の日差しの中で、土や水の匂い、鳥や虫の声に触れた時に、なんだか懐かしいような、新鮮な、そんな感覚が湧き起こりました。その時は気づきませんでしたが、「そういえば人の感覚って豊かだったなぁ」と実感していたんだと思います。この感覚は、人と接する際にも心地よさや誠実さといった目に見えない形で、相手にも伝わるような気がしています。だからこそ、最近は透明な感覚を大事にしたいと考えています。
 30年ほど前に発売された、とある有名なRPGゲームがあります。そのゲームでは、主人公は与えられた目的を達成するために、強敵を倒す戦略を考えたり、経験値を貯めてレベルを上げながら前進していきます。
 これって現実とよく似ているなと私は思うんです。それぞれのステージごとにクリアすべき課題を整理し、改善策を練り、地道に自己スキルを高める──機械的にいえば、この繰り返しで人は成長していくのだと思います。ただし現実世界では、自分の軸というエッセンスがないと前進したくても足取りが重くなったり、自分自身を見失って迷子になってしまうことがあります。
 一転してゲームの道中には、草原や泉、火山……各地にパワースポットのような「自分の根幹に触れられる場所」があり、主人公がそこを訪れると懐かしくて温かな記憶を思い出します。そしてその場所をすべて訪れた後、主人公はグンと強くなれるんです。もしかしたらそれは、私にとっての「透明になれる場所」と同じ感覚なのかも──そんなことを考えながら、今日もまた、私を豊かに成長させてくれる「透明になれる場所」を探しています。
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